AVRでウシ弁とブタ弁の違いは?:J Card Surg. 2022 Dec;37 (12):4555-4561.

Outcomes of bovine versus porcine surgical aortic valve replacement

Sarah Yousef, et al.

J Card Surg. 2022 Dec;37 (12):4555-4561.

要旨

牛弁と豚弁について

牛弁は1頭から一つの弁を形成しているが、その弁尖の長さはやや長く、冠動脈に届くこともある。ただ、バルサルバ洞内では層流を形成している。
豚弁は2頭から一つの弁を形成しており、NCCサイドが分離して動くため、圧較差をより形成し、バルサルバ洞内で乱流を形成する。
2者の違いはあるものの、バルサルバ洞を超えた段階では2者の違いはほぼなくなると言われている。

この研究論文は、2010年から2020年にかけての大動脈弁置換術(AVR)において、牛心膜弁と豚弁を比較したレトロスペクティブ研究の詳細である。合計1502例の患者が分析対象となり、1090例が牛製、412例が豚製の人工弁を受けた。傾向スコアマッチングが適用され、リスク調整された412組が作成された。この研究では、術後の転帰、長期生存率、再介入の自由度、再入院の有無について、2種類の弁の間に有意差は認められなかった。これまでの研究で、弁の構造的劣化(SVD)、血行動態、長期転帰に差があることが示されてきたが、本研究は、AVRに焦点を当て、交絡因子をコントロールするために傾向マッチングを適用することで貢献している。しかし、レトロスペクティブなデザインであること、長期の心エコーデータがないこと、単一施設であることなどの制限がある。

既存の研究との関連
この研究は、AVRにおけるウシ弁とブタ弁の使用に関する現在進行中の論争に貢献するものである。先行研究では相反する結果が得られているが、今回の研究では傾向スコアマッチングを用いて2種類の弁の比較を分離し、洗練された視点を提供している。AVRに焦点をあてることで、本研究はこれまでの知見を明らかにし、SVDにおける特異的な差異についての洞察を提供する。さらに、ステント留置大動脈弁とステントレス生体弁の比較についても論じており、弁選択の複雑さについての理解を深めている。

Abstract

大動脈弁置換術における牛心膜弁または豚弁の使用に関するガイドラインはなく、先行研究では相反する結果が得られている。本研究では、牛弁と豚弁を用いた大動脈弁置換術(AVR)を受けた患者の傾向をマッチさせたコホートにおいて、短期および長期の転帰を比較することを目的とした。

方法
2010年から2020年までに当センターで行われたすべての生体弁による外科的大動脈弁置換術のデータベースを利用したレトロスペクティブ研究である。患者を生体弁の種類(牛心膜弁または豚弁)によって層別化し、1:1の傾向スコアマッチングを適用した。死亡率についてはKaplan-Meier生存推定と多変量Cox回帰を行った。全死因再入院および大動脈弁再介入の累積発生率関数が作成された。

結果
合計1502人の患者が同定され、そのうちの1090人(72.6%)が牛製人工弁を、412人(27.4%)が豚製人工弁を受けた。傾向スコアマッチングの結果、リスク調整された412組が得られた。マッチングされたコホートにおいて、臨床的転帰や心エコー検査による術後転帰に有意差はみられなかった。Kaplan-Meier生存推定値は同等であり、多変量Cox回帰では、弁のタイプは長期死亡率とは有意に関連していなかった(ハザード比:1.02、95%信頼区間:0.74、1.40、p = 0.924)。さらに、全死因再入院(p = 0.68)または大動脈弁再介入(p = 0.25)の競合リスク累積発生率推定値には、マッチしたコホートにおいて有意差はみられなかった。

結論
ウシまたはブタの生体大動脈弁の使用は、術後転帰、長期生存、再介入や再入院の有無において同等である。

主要関連論文

  1. A meta-analysis from 2010 to 2015 examining the long-term survival in patients who underwent AVR with bovine or porcine prostheses.
  2. The large-scale studies in Sweden, England, and Wales comparing bovine and porcine aortic valves, involving roughly 13,000 and 40,000 patients, respectively.
  3. Randomized controlled trials investigating the comparison between stented and stentless bioprosthetic aortic valves.
  4. Research on the outcomes of valve-in-valve TAVR following stented versus stentless prostheses, including the valve-in-valve International Data registry study.

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