Pharmacokinetics and Pharmacodynamics of Remimazolam (CNS 7056) after Continuous Infusion in Healthy Male Volunteers: Part I. Pharmacokinetics and Clinical Pharmacodynamics
Jürgen Schüttler, et al.
Anesthesiology. 2020 Apr; 132(4):636-651.
要旨
この研究では、レミマゾラムを持続点滴で投与した場合の薬物動態と薬力学を研究した。この研究では、レミマゾラムの血漿中濃度を記述するために3コンパートメントモデルを用いており、再循環モデルを提唱したWiltshireらによる以前の研究とは対照的である。重要なことは、今回の研究では、Wiltshireのボーラス注射とは異なり、レミマゾラムをより緩徐な持続点滴として投与したことである。その結果、高いクリアランス、少量、短い半減期、わずかな個人間変動といったレミマゾラムの特性が、レミマゾラムをよく制御可能な薬物にしていることが明らかになった。シミュレーションの結果、レミマゾラムの投与には、標的を制御した点滴がより有効であることが示唆された。この研究では、レミマゾラムの代謝物であるCNS7054についても検討し、覚醒と鎮静に対する効果を調べた。血行力学的には、レミマゾラムの作用は緩やかであり、心臓の再分極に重大な影響を及ぼすことはなかった。しかし、この研究では一定の限界が明らかにされ、より広範な集団における今後の研究の必要性が強調された。
既存の研究との関連性
この研究は、鎮静薬であるレミマゾラムに関する一連の研究に追加するものである。Wiltshireらによる研究のように、これまでの研究ではレミマゾラムはボーラス投与であったが、本研究ではレミマゾラムを持続点滴として投与した場合の効果についての知見が得られた。このことは、特に鎮静効果を長時間にわたって安定的に持続させたいと考えている臨床医にとって、理解を広げるものである。この薬物の速やかな作用発現と消失性は、迅速な鎮静と回復を必要とする状況において、その潜在的な臨床的有用性を強調するものである。さらに、レミマゾラムの心臓動態への影響は軽微であるという研究結果は、麻酔薬や鎮静薬にとって重要な考慮事項である安全性プロファイルを強調するものである。
Abstract
背景
Remimazolam(CNS 7056)は、静脈内鎮静および麻酔用の新しい超短時間作用型ベンゾジアゼピンである。その薬物動態および薬力学はボーラス投与で報告されている。本研究では、レミマゾラムの持続注入後の薬物動態および薬力学を検討することを目的とした。
方法
健康な男性ボランティア20名(20~38歳、64~99kg)にレミマゾラムを5mg/分で5分間、次の15分間は3mg/分、さらに15分間は1mg/分で持続点滴静注した。レミマゾラムとその代謝物の薬物動態は動脈血中濃度から決定した。鎮静はModified Observer’s Assessment of Alertness and Sedation scaleを用いて評価した。薬物動態学的薬力学的モデリングは母集団解析により行った。血行動態と心電図も調査した。
結果
薬物動態は、レミマゾラムについては3コンパートメントモデルで、代謝物についてはトランジットコンパートメントを含む2コンパートメントモデルで最もよく記述された。レミマゾラムは高いクリアランス(1.15±0.12 l/分、平均±SD)、小さい定常状態分布容積(35.4±4.2 l)、短い終末半減期(70±10分)を示した。4時間の点滴後の文脈依存的なハーフタイムのシミュレーションは6.8±2.4分であった。意識消失は開始5±1分後に観察され、完全な覚醒は注入停止19±7分後に回復した。Modified Observer’s Assessment of Alertness and Sedationスコアの薬力学は、効果部位コンパートメントを有するシグモイド確率モデルによって最もよく記述された。注意・鎮静スコアが1以下である場合の半値最大効果部位濃度は695±239ng/mlであった。中枢と効果部位間の平衡半減時間は2.7±0.6分であった。平均動脈血圧は24±6%低下し、心拍数は28±15%増加した。試験中、自発呼吸は維持された。心電図のQT間隔の有意な延長は観察されなかった。
結論
レミマゾラムの薬物動態学的-薬力学的プロフィールは、速やかな発現、速やかな回復、中等度の血行動態学的副作用を特徴とした。
その他主要薬剤情報
レミマゾラム | プロポフォール | |
中心コンパートメント容積(L/kg) | 0.06~0.08 | 0.433 |
定常時分布容積(L/kg) | 0.2~0.3 | 5.4 |
蛋白結合率(%) | 92 | 98 |
オクタノール/水分配係数(logP) | 2.55 | 3.83 |
※ 定常時分布容積が大きいと組織移行しやすい=透析や濾過されない
※ 蛋白結合率が高いと透析や濾過されにくい
※ オクタノール/水分配係数が高いと疎水性が高い
※ 蛋白結合率・オクタノール/水分配係数ともに高いと人工心肺回路吸着率が高い
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