心不全と心房細動は冠動脈疾患よりも予後に影響を与える:Circulation. 2011;124:289–296

Mortality and Readmission of Patients With Heart Failure, Atrial Fibrillation, or Coronary Artery Disease Undergoing Noncardiac Surgery

Sean van Diepen, et al.

要旨

本研究では、1999年から2006年にかけてカナダのアルバータ州で非虚血性心不全(NIHF)、虚血性心不全(IHF)、冠動脈疾患(CAD)、心房細動(AF)を有する患者が非心臓手術を受けた際の術後死亡率を調査した。その結果、HFおよび心房細動患者はCAD患者と比較して術後30日死亡リスクが有意に高く、現在の周術期リスク予測モデルがCADに重点を置いていることと矛盾することが示された。さらに、軽微な手技であっても、従来予想されていたよりも高いリスクがあった。この研究ではまた、死亡率はHFまたは心房細動と診断されてから4週間以内に行われた手術で特に高いことが明らかになった。この知見は現在の周術期ガイドラインを覆すものであり、周術期治療においてHFと心房細動にもっと注意を払うべきであることを示唆している。

関連性
この論文は、CADと比較して、さまざまな心血管疾患、特にHFと心房細動に関連する周術期リスクの理解に重要な洞察を与えるものである。現在のリスク予測モデルがHF患者における非心臓手術のリスクを過小評価していることを示すことで、リスク評価ツールの改善の必要性を強調している。この研究は、この分野で現在進行中の議論に貢献するとともに、臨床ガイドラインに影響を与える可能性があり、軽度の手術を受ける患者を含め、個々の患者のリスクに合わせて周術期治療を調整するのに役立つものである。

Abstract

背景
非心臓手術を受ける冠動脈疾患(CAD)患者の術後リスクについてはよく知られている。しかし、心不全(HF)や心房細動(AF)を有する患者における非心臓手術のリスクはあまり知られていない。本研究の目的は,HF,心房細動,CADを有する患者が非心臓手術の大手術と小手術を受けた場合の術後死亡率を比較することである。

方法と結果
1999年4月1日から2006年9月31日の間にカナダのアルバータ州で非虚血性HF(NIHF;n=7700)、虚血性HF(IHF;n=12249)、CAD(n=13786)、AF(n=4312)のいずれかの非心臓手術を受けた連続患者の4つのコホートを作成するために、人口ベースのデータを用いた。主要アウトカムは術後30日死亡率であった。未調整の術後30日死亡率は、NIHFで9.3%、IHFで9.2%、CADで2.9%、AFで6.4%であった(それぞれ対CAD、P<0.0001)。小手術を受けた患者では、術後30日死亡率はNIHFで8.5%、IHFで8.1%、CADで2.3%、AFで5.7%であった(P<0.0001)。多変量調整後も、NIHF、IHF、AF患者の術後死亡率はCAD患者よりも高いままであった(NIHF対CAD:オッズ比2.92;95%信頼区間2.44~3.48;IHF対CAD:オッズ比1.98;95%信頼区間1.70~2.31;AF対CAD:オッズ比1.69;95%信頼区間1.34~2.14)。

結論
現在の周術期リスク予測モデルはCADをHFや心房細動よりも重視しているが、HFや心房細動を有する患者はCADを有する患者よりも術後死亡リスクが有意に高く、軽微な手技であっても従来考えられていたよりも高いリスクを有する。

主要関連論文

  1. Lee, T.H., et al., “Derivation and prospective validation of a simple index for prediction of cardiac risk of major noncardiac surgery.” Circulation, 1999. A pioneering paper in developing cardiac risk prediction models.
  2. Hammill, B.G., et al., “Associations between outpatient heart failure process-of-care measures and mortality.” Circulation, 2010. A study on outpatient heart failure management and its impact on mortality.
  3. Go, A.S., et al., “Heart Disease and Stroke Statistics—2014 Update.” Circulation, 2014. An extensive report on the statistics related to heart disease and stroke, including AF.
  4. Poldermans, D., et al., “Guidelines for pre-operative cardiac risk assessment and perioperative cardiac management in non-cardiac surgery.” European Heart Journal, 2009. A guideline paper that could be contrasted with the study’s conclusions about HF and AF risks.
  5. O’Gara, P.T., et al., “2013 ACCF/AHA guideline for the management of ST-elevation myocardial infarction.” Journal of the American College of Cardiology, 2013. A guideline paper focusing on the management of CAD, which contrasts the study’s focus on HF and AF.

 

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