冠血管イベントの2次抑制にはP2Y阻害薬とバイアスピリンどちらが有用?:European Heart Journal Open, Volume 2, Issue 2, March 2022

P2Y Inhibitor or Aspirin Monotherapy for Secondary Prevention ofCoronary Events

Felice Gragnano, MD, PHD, et al.

European Heart Journal Open, Volume 2, Issue 2, March 2022

 

要旨

この論文は、動脈硬化性心血管病(ASCVD)患者の二次予防に対するP2Y12阻害薬とアスピリン単剤療法の有効性と安全性を比較したものである。解析には9つの試験が含まれ、総患者数は61,623人であった。その結果、アスピリン単剤療法と比較して、クロピドグレルまたはチカグレロルによるP2Y12阻害薬単剤療法は主要有害心イベント(MACE)を11%、心筋梗塞(MI)リスクを19%有意に減少させた。しかし、脳卒中リスク、全死亡、大出血については両治療法に有意差はみられなかった。著者らは、P2Y12阻害薬単独療法はアスピリン単独療法と比較して、大出血のリスクを増加させることなくアテローム血栓性イベントの有意な減少に関連すると結論している。

既存の研究との関連
本論文はASCVDの二次予防策を検討する文献群に加える重要なものである。これまでの研究や試験では、P2Y12阻害薬とアスピリンの両方がASCVD後の心イベントを減少させる有効性が明らかにされてきたが、包括的な比較は限られていた。このメタアナリシスは既存のエビデンスを統合し、これら2つの薬物クラスのより確実な比較を提供するものである。その結果、特定の患者群ではアスピリン単剤療法よりもP2Y12阻害薬単剤療法を優先することが支持された。さらに、クロピドグレルに対する奏効率や、クロピドグレルに対する奏効が不十分な患者に対するチカグレロルやプラスグレルのような代替薬を考慮し、個別化された抗血小板療法への道を開くものである。しかしながら、著者らは、より直接的な比較試験や個々のP2Y12阻害薬に関する研究の必要性を指摘している。

Abstract

目的
アテローム性動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)患者の二次予防におけるP2Y12阻害薬またはアスピリン単剤療法の有効性と安全性を比較すること。
方法と結果
Medline,Embase,Cochrane Centralの各データベースを検索し,ASCVD(心血管疾患,脳血管疾患,末梢動脈疾患)患者の二次予防におけるP2Y12阻害薬単剤療法とアスピリン単剤療法を比較したランダム化試験を同定した。主要アウトカムは主要有害心イベント(MACE)であった。副次的アウトカムは心筋梗塞(MI)、脳卒中、全死亡、大出血であった。リスク比(RR)と対応する95%信頼区間(CI)の算出にはランダム効果モデルを用い、研究間の異質性はHiggins I2値を用いて評価した。合計9試験(クロピドグレル5試験、チカグレロル4試験)、61623例が解析に組み入れられた。P2Y12阻害薬単剤療法はアスピリン単剤療法と比較して、MACEリスクを11%(0.89、95%CI 0.84-0.95、I2 = 0%)、MIリスクを19%(0.81、95%CI 0.71-0.92、I2 = 0%)有意に減少させた。脳卒中(0.85、95%CI 0.73-1.01)、全死亡(1.01、95%CI 0.92-1.11)のリスクには有意差はなかった。P2Y12阻害薬単剤療法による大出血のリスクもアスピリンと比較して有意差はなかった(0.94、95%CI 0.72-1.22、I2 = 42.6%)。結果は使用したP2Y12阻害薬にかかわらず一貫していた。
結論
二次予防のためのP2Y12阻害薬単独療法は,大出血のリスクを増加させることなく,アスピリン単独療法と比較してアテローム血栓性イベントの有意な減少に関連する。

主要関連論文

  1. “Clopidogrel versus Aspirin in Patients at Risk of Ischemic Events (CAPRIE)” (1996): This trial was the first large study comparing aspirin with a P2Y12 inhibitor (clopidogrel) in patients with recent MI, ischemic stroke, or symptomatic peripheral arterial disease.
  2. “Platelet-Oriented Inhibition in New TIA and minor Ischemic Stroke (POINT) Trial” (2018): This trial compared aspirin and clopidogrel for secondary stroke prevention.
  3. “HOST-EXAM trial” (2021): The first randomized trial directly comparing aspirin with clopidogrel monotherapy following event-free completion of dual antiplatelet therapy post-PCI.
  4. “Clopidogrel with Aspirin in Acute Minor Stroke or Transient Ischemic Attack (CHANCE)” Trial (2013): This trial compared the outcomes of initial dual antiplatelet therapy for 21 days followed by clopidogrel with aspirin monotherapy after a minor stroke or transient ischemic attack.

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