⭐︎IMPELLAの扱い方・考え方

本記事は最新のガイドラインと現場レベルの知見を掛け合わせたImpellaの使用方法のリアルである。
患者の循環動態のどこに異常があるかを把握した上で、Impellaによる左室のunloadingとVA-ECMOによる右心系のunloadingをうまく活用し、良好な循環サポートの一助になれば幸いである。

 

種類

IMPELLA CP SMARTASSIST
 trans femoral, 3.7L/min
   径:14Fr
   流量:AUTO/P0-P9
   使用日数:8日

IMPELLA5.5 SMARTASSIST
 trans axial/subclavian, 5.5L/min
   径:19Fr/21Fr(カニュラ)
   流量:P0-P9
   使用日数:30日

 

期待される効果

・FLOW↑+ MAP↑ → CPO↑ → 末梢臓器灌流の改善
                                                                  ※CPO=MAP x CO x 0.0022

・MAP↑+LVEDP/V↓ → DO2↑, 心臓酸素需要↓ → 左室 unloading

※VA-ECMOのみだとFLOW・MAP↑で末梢臓器灌流の改善は認めるが、後負荷上昇によるLVEDP/V↑により左室への負荷は上昇する。一方で右心系の前負荷を脱血するため、右心系のunloadingにはなる。

 

仕組み

軸流ポンプで羽が回転して左室内の血液を吸引し、上行大動脈に吐出する。
→流量はインペラの回転速度に比例

※パージシステム
加圧されたブドウ糖液(粘性と金属腐蝕の少なさのメリット)によるパージ液がモーターに供給され、血液と逆方向に流れることで圧バリア(≧300mmHg)としてモーター内の血液侵入を防ぐ。

※モーター
それぞれ対応期間が異なり、それよりも延長して使用していくとモーターの摩耗によりモーター波形の圧が上昇していく。値が上がりすぎると安全装置で停止してしまう。

 

適応

SCAI心原性ショックステージ分類

At risk  shockのリスクがある状態=CHF-AE, AMIなど
Beginning   Pre shock状態=低還流ではないがvital異常
Classic   shock=緊急輸液療法+αで治療中
Deteriorating   Shock離脱困難=末梢循環不全や治療反応性↓
Extremis   循環破綻状態

ImpellaはB〜C以降、VA-ECMOはC〜D以降、ECPELLAはD〜Eが適応と言われている
BからCに移行させないことが重要

 

心臓手術におけるImpellaの有用性

・Bridge to Open Heart Surgery
単なる手術までの繋ぎにも有用だが、急性期のischemic VSPで組織の繊維化までunloadingによりもたせるのにも有用な可能性(trans axial deviceに限る)

・Bridge to Open Heart Surgery and Recovery
サージカルモード(ポンプアラームoff, パージシステムon)を使用して開心術を行う。EpiAo echoでAo clampがシャフト部分を噛めているかの確認心筋保護液注入の特殊性(P-1,2状態で回しながらante→サージカルモード→その後はretro/selective)、weaning時のImpellaのエア抜き(Ao declamp前にサージカルモードを停止しP-0とP-1を繰り返してルートベントからエア抜き)など特殊操作が必要。

・OPCAB w/ Impella

・左心不全→肺鬱血→肺胞出血時の左心系unloadingによる改善

・LCOSに対するECpellaによる補助

※ Impella+IABPはどうなの?
一見脳還流が良くなり、悪いことはなさそうだが、実際に橈骨動脈圧を計測してみると一時的にかなりの圧上昇があることが現場レベルで散見される。
また、Impellaの定常流に対して一時的な後負荷の急激な上昇を繰り返すことはかなりの非効率である。
しかし、そのような利用も心拍動下では無しではないのでその場合はIABPの膨張を1/3程度弱めることでImpellaの定常流を損なうことを減弱するといいかもしれない。

 

管理

ACTコントロール

挿入時:250~500sec
挿入後:160~180sec

適切な留置位置

・留置位置が移動せず安定している
・吸入部が僧帽弁尖、腱索、乳頭筋、心室壁に接触していない
・吐出部が大動脈弁に接触せず、大動脈弁より上部に位置する
・TEE/TTE左室長軸像で
      大動脈弁から吸入部の距離はCP : 約3.5cm,  5.5 : 約5cm
      吸入部の判断は
   カニュラの二重線が見切れた部分
    もしくは
   吸入部先端の金属部分の手前で確認

・波形による位置判断

AoとLVで収縮期が類似、かつLVの拡張期が0
   →正常

収縮期・拡張期ともにLVとAoで位置波形が乖離
 →位置不良で脱血不良

拡張期のLV位置波形がマイナス
 →左室内volume不良による脱血不良

Ao波形にSpikeが入る
 →全体が抜けてきて吸入部が大動脈弁に近づいてきている

LVとAoの位置波形がuncouppling(Ao flat, LV 脈圧あり)
   →脈圧の消失、大動脈弁の閉鎖、左室のunloading

LVの位置波形がflat
 →P-3以下になっている
  (LV波形は計算から作成されておりP-4以上で出現)

モーター波形がflat
   →Aoに吸入部がある

※モーター波形の値については初期値を見ておくことが重要。値が上昇すると停止する安全機構となっている。急に上昇した場合は蛋白や血栓でモーター異常が生じた可能性があり、ヘパリン量を増やすと改善の可能性がある。徐々に上昇して高くなった場合は、長期間使用によるモーターの摩耗が原因のことが多く、入れ替えが必要である。

 

ECPELLAについて

SCAI分類のStageC以降で検討される。Stage C,DかつLV機能低下で臓器低灌流の持続かつLVEDP≧15mmHgとなったときにImpellaを導入し、さらに右心機能低下が生じたときに右心系のunloading目的にVA-ECMOを用いる。また、StageEで既にVA-ECMOが入っている状態で臓器低灌流の持続かつLVEDP>15mmHgが生じた場合にも使用する。
あくまでVA-ECMOでしっかり圧を出した状態で、ImpellaでLVのunloading=ventingを行なってあげるイメージでの使用が推奨される。

よって、併用するときにはPCPSを離脱することを目標に毎日テストを行う。

VA-ECMO離脱テスト

MAP≧60~65
LVEDP < 18mmHg
CVP < 18mmHg
CI > 2.2L/min/m2
CPO > 0.7~0.8W

 

参考文献

  1. RECOVER1 Trial
  2. 2023年JCS/JSCVS/JCC/CVITガイドラインフォーカスアップデート版PCPS/ECMO/循環補助用心内留置型ポンプカテーテルの適応・操作

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