Blood flow energy loss: a predictor for the recovery of left ventricular function after bioprosthetic aortic valve replacement
Yu Hohri, et al.
Interactive Cardiovascular and Thoracic Surgery(2021)1-9
要旨
この論文は、2種類の生体弁(ブタ弁とウシ心膜弁)を用いた大動脈弁置換術(AVR)後の術後左室(LV)機能の予測因子としてのエネルギー損失(EL)の有用性を検討したものである。この研究では、4次元フロー磁気共鳴画像法(4DフローMRI)を用いて、2つの弁の間に明瞭なフローパターンを発見し、総EL/CO(エネルギー損失/心拍出量)比がAVR後のLV駆出率の改善と強い相関を示した。著者らは、この比率の最適化がAVR後の血行動態を改善する可能性があること、また、EL/CO比は弁のサイズや大動脈の形状に影響されることから、手術戦略のための貴重なツールとなりうることを示唆している。
既存研究との関連性
本研究で得られた知見は、AVR後の術後血行動態の評価におけるギャップを埋めるものとして重要である。心エコーのような従来の方法では、血行動態の評価と長期予後との間に食い違いがあることが示されてきた。この論文は、大動脈の流れパターンとエネルギー損失分布を理解するための新しいアプローチを紹介し、術前計画と長期予後を改善するための洞察を提供する。
※central figureより引用
Abstract
目的:大動脈弁置換術(AVR)後の左室(LV)機能の改善を推定することは困難である。本研究の目的は,エネルギー損失(EL)がAVR後の術後LV機能を予測できるかどうかを評価することである。
方法:生体弁によるAVRを施行した9名の患者を本研究に登録した。豚人工弁が5例に、牛心膜人工弁が4例に使用された。大動脈のフローパターンを可視化し、LVから下行大動脈までの4次元フローMRIを用いてELと心拍出量(CO)を測定し、抽出領域のEL/CO比を総EL/CO比として算出した。
結果:ブタ弁では、全収縮期に上行大動脈で激しいヘリカルフローが観察された。一方、ウシ心膜弁では、収縮初期にまっすぐな経弁的大動脈流が観察され、収縮中期以降に上行大動脈の大湾曲部と小湾曲部の両側に2つの大きな渦流が発生した。総EL/CO比はAVR後のLV駆出率の改善と強い相関があった(r = 0.74, P = 0.02)。
結論: 大動脈のフローパターンはブタ弁とウシ心膜弁で異なる。総EL/CO比はAVR後のLV駆出率の改善を評価するための貴重なツールである。総EL/CO比の最適化はAVR後の血行動態を改善する可能性がある。
※figure1より引用
主要関連論文
- Otto, C.M., Bonow, R.O. (2020). “Valvular Heart Disease: A Companion to Braunwald’s Heart Disease.” Explains the underlying concepts of valve replacement and hemodynamics.
- Hope, M.D., Meadows, A.K., et al. (2008). “Clinical evaluation of aortic valve stenosis: MRI comparison with echocardiography.” Discusses the diagnostic evaluation of aortic stenosis using MRI.
- Kilner, P.J., Yang, G.Z., et al. (2000). “Helical and retrograde secondary flow patterns in the aortic arch studied by three-directional magnetic resonance velocity mapping.” A foundational study on flow patterns in the aorta.
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