AIによる臨床表現型の推定 Ver. CPB : Anesth Analg. 2023 Mar 1;136 (3): 507-517.

Derivation and Validation of Clinical Phenotypes of the Cardiopulmonary Bypass-Induced Inflammatory Response

Adam J Milam, et al.

Anesth Analg. 2023 Mar 1;136 (3): 507-517.

 

要旨

研究者らは、心肺バイパス(CPB)により誘発される炎症反応という異質な病態を、プレシジョン・メディシン・アプローチを用いて治療することを目的とした。最初のステップは、機械学習とシミュレーションツールによって同種のサブグループを特定することであった。2010年1月から2020年3月までの心臓手術症例25,613例を含むクリーブランドクリニックのデータを使用した。K-meansベースのコンセンサスクラスタリング解析を用いて、周術期の臨床変数に基づいて3つの臨床表現型(α、β、γ)を導き出した。表現型αに属する患者は予後が悪く、術後に炎症性バイオマーカーと腎障害バイオマーカーが上昇することが観察された。これらの表現型は、CPBによる炎症反応の管理における精密医療に焦点を当てた今後の研究の基礎となる可能性がある。

既存の研究との関連性

この論文は、機械学習と精密医療を統合し、CPB誘発炎症反応に焦点を当てた臨床的アプローチを再定義する模範である。以前は、このような層別化は、手技や併存疾患に基づく手作業による分類に限られていた。この研究は、敗血症や糖尿病などの病態に機械学習を活用した同様の研究によって証明されているように、ヘルスケアにおける人工知能の可能性を再確認するものである。教師なし学習アプローチが、人間の観察では不明瞭なままかもしれないデータ内の根本的なパターンをいかに明らかにできるかを強調している。さらにこの論文は、患者固有のデータに基づいて治療戦略を調整する可能性を拡大し、プレシジョン・メディシンの広範なトレンドに沿うものである。

Abstract

背景
プレシジョン・メディシンは、治療を “画一的な “アプローチから、個々の患者に基づいたオーダーメイドの治療へと変化させることを目的としている。心肺バイパス(CPB)誘発性炎症反応のような不均一な病態にプレシジョン・メディシン・アプローチを適用するには、まず生物学的マーカーと術後転帰に相関する均質なサブグループを同定する必要がある。第一段階として、機械学習とシミュレーションツールを用いて周術期の臨床変数のパターンを同定することにより、CPB誘発性炎症反応の臨床的表現型を導き出した。次に、これらの表現型が生物学的反応変数や臨床転帰と関連しているかどうかを評価した。

方法
この単一施設のレトロスペクティブコホート研究では、2010年1月から2020年3月までにCPBを用いた心臓手術を受けた患者のクリーブランドクリニックの登録データを使用した。臨床試験に登録された患者のサブグループのバイオマーカーデータも対象とした。緊急手術、オフポンプ手術、移植術、胸腹部下行大動脈手術、補助人工心臓の計画的装着を受けた患者は除外した。患者のベースライン特性(人口統計、合併症、検査データ)および周術期データ(手技データ、CPB期間、血行動態)の術前および術中の変数を分析し、K-meansベースのコンセンサスクラスタリング解析を用いて臨床表現型を導き出した。曖昧にクラスタリングされた比率を用いて、クラスタサイズと最適クラスタ数を評価した。クラスター形成後、周術期プロファイル、炎症性バイオマーカー(例、インターロイキン[IL]-6およびIL-8)、腎臓バイオマーカー(例、尿中好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン[NGAL]およびIL-18)、および臨床転帰(例、死亡率および入院期間)を要約した。すべての要約変数について一対標準化差を報告した。

結果
対象となった心臓手術症例36,865例のうち、25,613例が組み入れ基準を満たした。クラスター解析により、α、β、γの3つの臨床表現型が導き出された。 表現型α(n = 6157 [24%])には、心不全や腎不全を含む合併症の多い高齢患者が含まれていた。表現型β(n = 10,572[41%])の患者は若く、ほとんどが男性であった。表現型γ(n = 8884 [35%])の患者は58%が女性で、体格指数(BMI)が低かった。表現型αの患者は、入院期間が長く(平均=αで9日、βで6日[絶対標準化差{ASD}=1.15]、γ[ASD=1.08])、腎不全が多く、死亡率が高かった。炎症性バイオマーカー(IL-6およびIL-8)および腎障害バイオマーカー(尿中NGALおよびIL-18)は、手術直後のβおよびγと比較してαの表現型が高かった。

結論
反応バイオマーカーおよび転帰と相関する臨床的表現型を導き出したことは、CPB誘発炎症反応の管理に対する精密医療アプローチへの最初の一歩であり、治療効果の不均一性の評価を含む今後の研究の基礎を築くものである。

 

主要関連論文

  1. “The Application of Artificial Intelligence in the Early Diagnosis of Sepsis: A Literature Review.”
  2. “Precision Medicine and Personalized Approaches to Diabetes Management.”
  3. “Machine Learning in Cardiovascular Medicine: Are We There Yet?”
  4. “Clinical Applications of Machine Learning in Cardiovascular Disease and its Relevance to Cardiac Imaging.”
  5. “Unsupervised Machine Learning in Medical Imaging: A Guide for Beginners.”

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