Septic cardiomyopathy: A narrative review
Maria Rita Lima, et al.
Rev Port Cardiol. 2023 May;42(5):471-481
要旨
この研究論文は、敗血症患者の半数以上にみられる可逆性心不全の一形態である敗血症誘発性心筋機能障害(SIMD)について包括的にレビューしたものである。SIMDは、正常または低いfilling pressureの心室拡張と、どちらか一方または両方の心室の機能障害を特徴とし、多くの場合可逆的である。敗血症の複雑な血行動態がもたらす診断上の課題にもかかわらず、心エコーと心臓MRIの進歩により、初期段階でもSIMDのより正確な同定と評価が可能となっている。しかし、SIMDのメカニズム、特徴、治療法、予後は依然として不明確であり、さまざまな研究から導き出された結論にも食い違いがある。
本稿は、SIMDの定義、診断、予後への影響に関する既存の研究を要約することにより、SIMDに関する知識の体系に貢献するものである。敗血症性心筋症(Semptic Cardiomyopathy)は1967年に初めて報告され、その後、徐々に定義が改良され手いった。敗血症患者におけるSIMDの有病率と死亡率の増加との相関は、臨床的実体としてのSIMDの重要性を強調している。
現在の定義では、SIMDは以下のように分類されている
- 心室圧が上昇する心原性ショックのパターンとは異なり、心室コンプライアンスが上昇し、充満圧が正常か低い心室拡張。
- SVの減少を伴わないEFの減少。
- 輸液やカテコールアミンに対する反応の低下。
- 7~10日で可逆性。心臓MRIでは、心筋浮腫や代謝状態の変化を示唆する変化が検出されるが、これは虚血や壊死とは異なるパターンであり、不可逆性と一致する。SIMDは心臓の保護的な「冬眠」状態を表しているのではないかという説もある。
- 病因としての急性冠症候群の除外
Abstract
敗血症は、多臓器不全を転帰とする、感染由来が疑われる、あるいは証明された全身性炎症反応症候群である。敗血症誘発性心筋機能障害(SIMD)は敗血症患者の50%以上にみられ、(i)正常または低いfilling pressureかつLVの拡張、(ii)右室and/or LV(収縮 and/or 拡張)の機能障害、(iii)可逆性を特徴とする。1984年にParkerらによって最初の定義が提唱されて以来、SIMDの定義が試みられてきた。敗血症患者の心機能評価には多くのパラメータが用いられるが、この病態では本質的な血行動態の変化があるため、時には測定が困難になることもある。とはいえ、スペックルトラッキング解析のような高度な心エコー技術を用いれば、敗血症の初期段階であっても収縮期および拡張期機能障害を診断・評価することが可能である。心臓磁気共鳴画像法は、この病態の可逆性についての新たな洞察をもたらす。この病態のメカニズム、特徴、治療法、さらには予後に関しては、まだ多くの不確実性が残っている。そのため、この総説ではSIMDに関する現在の知見をまとめることを試みる。
主要関連論文
- “Septic cardiomyopathy: a not so rare form of heart failure” by J. Muntané et al. (2021)
- “Echocardiographic evaluation of patients with sepsis: is there a role for speckle tracking?” by L. Longobardo et al. (2016)
- “Clinical review: Sepsis and septic shock – the potential of gene arrays” by J.C. Marshall et al. (2002)
- “Reversibility of septic myocardial depression demonstrated by tissue Doppler echocardiography” by P. Sturgess et al. (2010)
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