A Multicenter Trial of Remote Ischemic Preconditioning for Heart Surgery
List of authors.
Patrick Meybohm, M.D., et al., for the RIPHeart Study Collaborators
N Engl J Med 2015; 373:1397-1407
要旨
この研究論文は、心臓手術を受ける患者に対する遠隔虚血前処置(RIPC)の臨床効果に焦点を当てたものである。二重盲検ランダム化比較試験において、研究者らは成人患者を対象に上肢RIPCと偽介入の結果を比較した。この試験の主要複合エンドポイントは退院までの死亡、心筋梗塞、脳卒中、急性腎不全の発生であった。副次的エンドポイントは90日目までの主要エンドポイントの各要素であった。
RIPC群692例、偽RIPC群693例、計1385例が登録された。複合主要エンドポイントの発生率、主要エンドポイントの各要素の発生率に両群間に有意差はみられなかった。同様に、トロポニン放出レベル、人工呼吸期間、集中治療室または入院期間、心房細動の発症、術後せん妄の発生率にも差はみられなかった。RIPCに関連した有害事象は認められなかった。したがって、研究者らは、プロポフォール誘発麻酔下で行われた上肢RIPCは、待機的心臓手術を受ける患者において実質的な有益性を示さなかったと結論した。
この研究は、心臓手術後の臨床転帰の改善におけるRIPCの有効性に関するさまざまな結果に、既存の研究との関連で追加するものである。先行研究の中には、転帰の改善や臓器保護効果を示したものもあったが、有益な影響を見いだせなかったものもあった。この研究はまた、麻酔レジメンや試験デザインなどの因子がRIPC試験の結果に及ぼす潜在的な影響についての洞察も提供している。
Abstract
背景
遠隔虚血プレコンディショニング(RIPC)は、心臓手術を受けた患者の虚血および再灌流障害のバイオマーカーを減少させることが報告されているが、臨床成績については不明な点が多い。
方法
プロポフォール静脈内投与による全身麻酔下で人工心肺を必要とする待機的心臓手術を予定している成人を対象とした前向き二重盲検多施設ランダム化比較試験を実施した。この試験では上肢RIPCと偽介入が比較された。主要エンドポイントは退院時までの死亡、心筋梗塞、脳卒中、急性腎不全の複合であった。二次エンドポイントは90日目までの一次エンドポイントの各要素の発生であった。
結果
合計1403例の患者が無作為化を受けた。全解析セットは1385例(RIPC群692例、偽RIPC群693例)であった。複合一次エンドポイント(RIPC群99例[14.3%]、偽RIPC群101例[14.6%]、P=0.89)および個々の要素である死亡(9例[1. 死亡(それぞれ9例[1.3%]と4例[0.6%]、P=0.21)、心筋梗塞(47例[6.8%]と63例[9.1%]、P=0.12)、脳卒中(14例[2.0%]と15例[2.2%]、P=0.79)、急性腎不全(42例[6.1%]と35例[5.1%]、P=0.45)であった。プロトコールごとの解析でも結果は同様であった。いずれのサブグループ解析でも治療効果は認められなかった。トロポニン放出レベル、人工呼吸の期間、集中治療室または入院期間、心房細動の新規発症、術後せん妄の発生率については、RIPC群と偽RIPC群との間に有意差は認められなかった。RIPCに関連した有害事象は観察されなかった。
結論
プロポフォール誘発麻酔下で実施された上肢RIPCは、待機的心臓手術を受けた患者において関連した有益性を示さなかった。
主要関連論文
-
“Remote Ischaemic Preconditioning Protects the Heart during CABG Surgery” by Hausenloy et al., (2007) – This was one of the initial studies to show that RIPC could reduce the damage caused by prolonged ischemia in patients undergoing coronary-artery bypass grafting (CABG).
-
“Remote Ischemic Preconditioning Reduces Myocardial and Renal Injury after Elective Abdominal Aortic Aneurysm Repair: A Randomized Controlled Trial” by Ali et al., (2007) – This study provided evidence of RIPC’s protective effects on other organs such as the kidneys.
-
“Effect of Remote Ischaemic Preconditioning on Clinical Outcomes in Patients Undergoing Coronary Artery Bypass Graft Surgery (ERICCA): rationale and study design of a multi-centre randomized double-blinded controlled clinical trial” by Rahman et al., (2010) – This is a protocol paper for a large multi-center trial, showcasing how rigorous trial designs are being applied to the study of RIPC.
-
“Effect of Remote Ischemic Preconditioning on Kidney Injury Among High-Risk Patients Undergoing Cardiac Surgery” by Zarbock et al., (2015) – This paper provided mixed results on the effectiveness of RIPC, indicating that its benefits might not extend to all patient populations.
-
“Meta-Analysis of Remote Ischemic Preconditioning in Patients with Heart Failure” by Wang et al., (2018) – This is a recent meta-analysis that combined the results of several studies to derive a more statistically robust conclusion on the effectiveness of RIPC.
コメント