Post-induction hypotension with remimazolam versus propofol in patients routinely administered angiotensin axis blockades: a randomized control trial
Song SW, et al.
BMC Anesthesiol. 2023 Jun 22;23(1):219
要旨
この研究論文は、単盲検並行群間無作為化対照試験として実施され、アンジオテンシン系遮断薬の定期投与を受けている患者において、レミマゾラムまたはプロポフォールのいずれかを投与した後の麻酔導入後低血圧(PIH)の発生率を調査した。その結果、レミマゾラムの方がプロポフォールよりもPIHの頻度が低いことが判明した。また、本研究で、アンジオテンシン系遮断薬投与患者はPIHに対して脆弱であることは既知の事実だが、血圧低下の程度が中でも重要であることが示された。レミマゾラムはプロポフォールと比較して約10mmHgの低減を示し、その結果、術後合併症が少なくなる可能性がある。
アンジオテンシン系遮断薬を投与された患者におけるPIHの重大なリスクを考慮し、麻酔導入のためのプロポフォールに代わる選択肢に重点を置いている点に、既存の研究との関連性がある。この研究結果は、特に健康リスクのある患者の麻酔管理をめぐる現在進行中の議論や研究に貢献し、合併症のリスクを最小化するために適切な麻酔導入剤を選択することの重要性をさらに強調するものである。さらに、この研究は、プロポフォールに代わるより安全な麻酔薬としてのレミマゾラムの可能性についての洞察を提供し、この新しい麻酔薬に関する限られた、しかし増加しつつある文献をさらに増やすものである。
この分野における画期的な論文としては、血圧と低血圧に対するプロポフォールの効果を研究したものや、レミマゾラムとプロポフォールの比較効果に焦点を当てたものがある。アンジオテンシン軸遮断薬とその麻酔への影響に関する初期の重要な研究も、基礎的なものと考えられる。具体的な論文の推奨には、これらのトピックに基づくさらなる研究が必要であろう。
Abstract
背景
高血圧に対する第一選択薬として頻繁に投与されるアンジオテンシン系遮断薬など、ある種のルーチンの薬剤は麻酔導入後低血圧(PIH)を引き起こす可能性がある。レミマゾラムはプロポフォールよりも術中低血圧が少ないと報告されている。この研究では、アンジオテンシン系遮断薬で管理されている患者において、レミマゾラムまたはプロポフォール投与後のPIHの全発生率を比較した。
方法
この単盲検並行群間ランダム化比較試験は、韓国の3次大学病院で実施された。全身麻酔で手術を受ける患者は、アンジオテンシン変換酵素阻害薬またはアンジオテンシン受容体拮抗薬の投与、19~65歳、ASA-PS≦III、他の臨床試験への関与なしという組み入れ基準を満たす場合に登録が考慮された。
主要アウトカムはPIHの全発生率とし、平均血圧(MBP)<65mmHgまたはベースラインMBPの30%以上の低下と定義した。測定時点は、ベースライン、最初の挿管を試みる直前、挿管後1分、5分、10分、15分とした。心拍数、収縮期および拡張期血圧、バイスペクトル指数も記録した。
P群とR群には、導入剤としてそれぞれプロポフォールとレミマゾラムが投与された患者が含まれた。
導入方法
レミフェンタニルの注入を0.25μg/kg/minの速度で開始した。患者は2分間preoxyganateされた。P群では、リドカイン20mgと混合したプロポフォール2mg/kg(IBW)をpreoxygenate後に注入した。盲検化のためにレミマゾラムを0.1mg/hの速度で注入した。R群では、IBW1kgあたり0.2mLの生理食塩水を投与し、最初にレミマゾラムを6mg/kg/hの速度で注入した。
意識消失後、両群ともレミマゾラムを1mg/kg/hの速度で注入した。レミマゾラムの注入速度は0.1mg/kg/hずつ増加させ、BISが60を超えた場合は2mg/kg/hとした。神経筋ブロックのためにロクロニウム0.8mg/kg IBWを投与し、2分半後に気管挿管を試みた。BISは40~60の範囲に維持された。MBPがベースラインから30%以上減少した場合、またはMBP<65mmHgの場合には、エフェドリン6mgまたはフェニレフリン50μgが投与された。
ロクロニウム0.15mg/kg(IBW)の追加ボーラスは、肺コンプライアンスが低下している場合、または外科医の判断で投与された。フェンタニル1μg/kgとラモセトロン0.3mgが術後疼痛コントロールと術後悪心・嘔吐予防のために投与された。
結果
無作為化された82例のうち、合計81例が解析された。PIHはプロポフォール群よりレミマゾラム群で頻度が低かった(62.5%対82.9%;t値4.27、P=0.04、調整オッズ比=0.32[95%信頼区間0.10-0.99])。ベースラインからのMBPの減少は、初回挿管試み前のP群よりR群で9.6mmHg少なかった(95%信頼区間3.3-15.9)。収縮期血圧と拡張期血圧についても同様の傾向がみられた。いずれの群でも重篤な有害事象は観察されなかった。
結論
アンジオテンシン軸遮断薬のルーチン投与を受ける患者において、レミマゾラムはプロポフォールよりもPIHの頻度が低い。
主要関連論文
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“The impact of angiotensin-converting enzyme inhibitor therapy on the extracellular fluid volume and blood pressure changes in patients undergoing paracentesis” by Krag A. et al., published in “Alimentary Pharmacology & Therapeutics” in 2010. This paper explores the effects of angiotensin axis blockades in a surgical context.
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“Safety and efficacy of the perioperative administration of remimazolam: a systematic review and meta-analysis” by Tang C. et al., published in “Drug Design, Development and Therapy” in 2020. This paper critically evaluates available evidence on remimazolam and its potential uses in the perioperative setting.
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“A randomized phase II study comparing the efficacy and safety of remimazolam and propofol for gastrointestinal endoscopy” by Rex DK. et al., published in “Gastrointestinal Endoscopy” in 2020. This is a direct comparison of remimazolam and propofol, particularly relevant to your request.
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“Safety and efficacy of the perioperative administration of remimazolam: a systematic review and meta-analysis” by C. Tang et al., published in “Drug Design, Development and Therapy” in 2020. This paper is a comprehensive review and meta-analysis of remimazolam’s use in a perioperative setting, providing a broad view of the existing research data.
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